窒素の影響でT-Nの総量規制問題、汚泥浮上問題等で頭を抱える担当者様は多くいらっしゃると思います。そこで今回は「硝化脱窒反応のメカニズム」についてご説明いたします!
多くの担当者様が頭を抱えていらっしゃる窒素
なぜ窒素が排水処理に悪影響を与えているのでしょうか?
皆様の中にもこんな問題を抱えてはおりませんか?
- 沈殿槽で汚泥の固まりの浮上により、放流水にSSが流れ出てしまう。
- 放流水のT-Nの総量規制を超過してしまう。
- 曝気槽のpHが低下してしまう。
これは硝化脱窒反応が起きる事により、窒素の影響で発生する現象です。特にタンパク質の多い卵、牛乳の製品を扱っている工場様が頭を抱える問題ですね。この問題を解決するには【硝化脱窒反応のメカニズム】を理解することが必要です。好気的条件下では硝化反応が起きており、嫌気的条件下で脱窒反応が起きています。それぞれの反応工程を理解し、対策をすることで問題点の改善となります。
硝化脱窒反応のメカニズム
1. 硝化脱窒反応とは
- 排水中のアンモニア態窒素は、曝気槽内で亜硝酸菌あるいは硝酸菌等のいわゆる「硝化菌」の作用を受けて亜硝酸や硝酸イオンに変化します。(硝化反応)
- この排水を嫌気槽に導いて酸素を絶つと、これらのイオンに含まれる酸素が微生物に利用され、窒素ガスが放出されます。(脱窒素反応)
- 酸化的条件下で硝化反応が起こり、逆に嫌気的条件下では脱窒素反応が起こっています。
2. 硝化脱窒反応による現症例
- 汚泥の固まりが沈殿槽で浮上
汚泥中から小さな気泡が出る - SV 測定時に、汚泥に亀裂が入り浮上
- 汚泥と上澄液が逆転
- 曝気槽のpH 値の低下
- 汚泥浮上により放流水のSS 流出
- TP 、 TN の総量規制超過問題

3. 硝化反応のメカニズム
排水中のアンモニア態窒素、及び BOD 酸化菌の異化代謝によって、有機性窒素から転換されるアンモニア態窒素を硝化菌により、亜硝酸態窒素もしくは、硝酸態窒素に酸化します。メカニズムは下記の通りです。
【亜硝酸菌の生物酸化反応 】
2NH₄⁺ +O ₂ →2NO ₂⁻ +2H ₂ O+4H ⁺
この反応の結果、曝気槽のpHは低 下します。
この反応で生成された亜硝酸態窒素を、硝化菌が生物酸化させます。
【硝化菌の生物酸化反応 】
2NO₂⁻ +O ₂ →2NO ₃⁻
この反応ではpHは低 下しません。
4. 脱窒反応のメカニズム
硝化反応よって生成された亜硝酸態窒、硝酸態窒素は沈殿槽に行くと、嫌気的条件下になるため窒素ガスが発生します。メカニズムは下記の通りです。
【亜硝酸呼吸 】
2NO ₂⁻ +3 (H ₂) →N ₂ +2 OH ⁻ +2 H ₂ O
【硝酸呼吸 】
2NO ₃⁻ +5 (H ₂ )→N ₂ +2 OH ⁻ +4 H ₂ O
反応式のH₂は水素供与体であり、有機物 BOD のなかの構成水素を意味しています。つまり、流入水の有機物の代わりにメタノール(CH ₃ OH)を添加し水素供与体とすることもできます。
5. そもそも窒素の発生源は?
- 硝酸態窒素の反応工程については図1の通りで、発生源はタンパク質となります。 工場の製造工程でタンパク質が多く含んでいますと硝化脱窒の問題が生じる可能性が高いです。
- 図1の赤枠は独立性細菌による処理反応に対し、青枠は従属性細菌によって処理反応が起きています。
※独立性細菌:炭素源を無機物の炭素ガスに依存している細菌
従属性細菌:炭素源を有機物に依存している細菌
図1 反応工程
6. 硝化脱窒反応の問題点
- 硝化菌増殖速度 硝化菌の増殖速度が遅いため、汚泥日齢が短いと硝化菌が減少し、硝化反応が起きなくなります。汚泥の引抜をこまめに行っている工場は注意が必要です。
- 十分な酸素供給量 『3. 硝化反応のメカニズム』で記した式の通りNH4‐NをNO3‐Nまで酸化するのに2モルの酸素が必要になる事から、相応の曝気量が必要となります。MLSSが高濃度となると
酸素がいきわたらないため、硝化反応が滞ります。 - pH管理 亜硝酸菌の最適pHは中性から弱アルカリ性であり、pHが6以下となると活性度が著しく落ちるため硝化反応が滞ります。
7. 硝化脱窒素反応の改善策
- アンモニア態窒素の残留量が高いと硝化反応が滞っている可能性がありますので、菌層の強化が必要です。
- 脱窒を行うためには 、酸化的条件下である曝気槽で硝化を行い、後段に嫌気的条件下となる嫌気槽を用意する必要があります。システムは図2の通りになります。もしくは、後段の曝気槽を間欠曝気にする事によって窒素ガスを沈殿槽に行く前に処理する必要があります。
図2 生物脱窒素の基本構成
8. エンザイム汚泥削減システム導入による硝化脱窒効果
- アンモニア酸化能力の高い硝化菌が発生し、硝化反応を促進させることが出来ます。
- TSS増加量の減少、菌叢の活性化によりMLSSを下げた運転管理が可能になります。そのため、高濃度MLSSの運転管理の弊害である溶存酸素飽和点低下を防ぐことが出来ます。酸素が入りやすくなるため、硝化反応がより促進します。
- 腐植土の特性であるpH緩衝作用によって中性に向くため、硝化菌の最適pHに収まりやすくなります。
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